Windows 11 のアップデートを実行したら、今まで問題なく使えていたキーボードが反応しない、Wi-Fi や Bluetooth が繋がらない、といった深刻なトラブルに見舞われていませんか?
仕事や作業が中断され、途方に暮れている方も多いでしょう。この問題は、単なるドライバーの不具合から、システムの根幹に関わる複雑な原因まで様々です。
この記事では、Windows 11 のアップデート後に発生するキーボード、Wi-Fi、Bluetooth の接続障害について、考えられる原因を整理し、誰でも試せる簡単な対処法から、専門的なシステムの修復、そして多くの人が見落としがちな「最終手段」まで、段階的に詳しく解説します。
Windows Update 後に周辺機器が使えなくなる主な原因
なぜアップデートをきっかけに、このような問題が起きてしまうのでしょうか。まずは考えられる主な原因を理解し、冷静に状況を把握しましょう。
原因1:ドライバーの互換性問題
最も一般的な原因です。Windows Updateによって OS の仕様が変更されると、既存のデバイスドライバー(周辺機器を動かすためのソフトウェア)が新しい OS に対応できなくなり、正常に動作しなくなります。
原因2:Windows システムのファイル破損
アップデートの過程で、何らかの理由によりシステムファイルが破損してしまうことがあります。PC の動作に必要なファイルが壊れることで、デバイスの認識や通信機能に異常をきたします。
原因3:アップデートプログラム自体のバグ
Microsoft が提供する更新プログラム自体に、特定のハードウェア構成で問題を引き起こすバグが含まれているケースです。この場合、多くのユーザーで同様の症状が報告される傾向があります。
原因4:【意外な盲点】BIOS/UEFI と OS の互換性低下
PC の最も基本的な制御を司る BIOS/UEFI(マザーボードに搭載されたファームウェア)が古いままだと、最新のWindows 11 と正しく連携できなくなることがあります。
特にセキュリティ強化を伴う大型アップデート後には、この非互換性が原因で、キーボード入力や無線通信といった根幹的な機能が停止してしまう深刻なケースが報告されています。
海外のフォーラムでは、これが原因で「何を試してもダメだった」という状況が解決した事例もあります。
ステップ1:まず試したい基本的なトラブルシューティング
専門的な対処法の前に、まずは簡単でリスクのない基本的な方法から試してみましょう。これで解決することもあります。
1. PC の完全シャットダウンと再起動
通常の「再起動」ではなく、「完全シャットダウン」を試します。
- Shiftキーを押しながら、スタートメニューの電源アイコンをクリックし、「シャットダウン」を選択します。
- PC の電源が完全に切れたら、電源ケーブルを一度抜き、数分間放置します。
- 再度ケーブルを接続し、PC の電源を入れます。
なぜ Shiftキーを押しながらシャットダウンするの?
Windows 11 では、デフォルトで高速スタートアップが有効になっています。これが有効になっていると、通常のシャットダウンを行っても完全にはシャットダウンされせん。
2. Windows 標準のトラブルシューティングツール
Windows 11 には、問題解決を助けるためのツールが内蔵されています。
次のページを参考に、解決したい問題のトラブルシューティングツールを実行してみてください。
Windows10/11 トラブルシューティングツールを使って問題を解決する
解決したい問題に対しての項目がない場合は、次のページの方法をお試しください。
Win10/Win11 すべてのデバイスやハードウェアに関する問題の検出および解決
3. デバイスマネージャーでのドライバー確認と更新
ドライバーに問題が起きていないか直接確認します。
- スタートボタンを右クリックし、「デバイス マネージャー」を選択します。
- 「キーボード」、「ネットワーク アダプター」、「Bluetooth」などの項目を確認します。
- 「!」や「?」マークが付いているデバイスがあれば、それが問題の原因です。
- 下向きの矢印マークは「無効」になっているという意味です。
- 対象のデバイスを右クリックし、「ドライバーの更新」を選択します。
- 「ドライバーを自動的に検索」を選び、画面の指示に従います。
もし更新が見つからない場合は、一度デバイスを右クリックして「デバイスのアンインストール」を選択し(「このデバイスのドライバーを削除しようとしました」のチェックは入れない)、PC を再起動すると、ドライバーが自動的に再インストールされます。
お使いの PC メーカーサイトから最新のチップセットドライバーをインストールすると改善される場合があります。
ステップ2:システムファイルを修復する
基本的な方法で解決しない場合、システムファイル自体が破損している可能性があります。
次のページを参考に、コマンドプロンプトを使ってシステムの整合性をチェックし、修復を試してみてください。
Win10/Win11 システムファイルの修復「システムファイルチェッカー」
ステップ3:それでも解決しない場合の高度な対処法
システムの修復でも改善しない場合は、Windows Update 自体に原因がある可能性が高いと判断し、より直接的なアプローチを試します。
1. 問題の Windows Update をアンインストールする
アップデートを適用する前の状態に戻すことで、問題が解決するかどうかを切り分けます。
1.Windows Update の画面を開き、「更新の履歴」を開きます。
2.一番下の「関連設定」にある「更新プログラムをアンインストールする」をクリックします。
3.インストールされた更新プログラムの一覧が表示されますので、問題が発生した直前にインストールされた KB から始まるプログラム(例: KB5063878)を見つけ、アンインストール をクリックします。
4.アンインストール後、PC を再起動し、症状が改善したか確認します。
注意点:
アンインストールで問題が解決した場合、その更新プログラムが原因である可能性が高いです。
しかし、セキュリティ更新が含まれるため、長期間適用しないのは推奨されません。一時的に更新を 7日間停止し、その間に Microsoft が修正版をリリースするのを待つのが賢明です。
Win10/Win11 Windows Update を一時停止する方法
2. システムの復元を試す
事前に復元ポイントが作成されている場合に有効な手段です。PC 全体を問題が発生する前の時点の状態に戻します。
最終手段:BIOS/UEFI アップデートで問題を根本解決する
上記の全ての方法を試しても全く改善しない場合、マザーボードの BIOS/UEFI が原因である可能性を疑うべきです。
なぜBIOSアップデートが有効なのか?
BIOS は PC のハードウェア全てを管理する土台となるプログラムです。
Windows が大型アップデートで OS の根幹部分に変更を加えた際、古い BIOS がその変更に追従できず、ハードウェア(キーボード、Wi-Fi/Bluetooth チップなど)との通信に齟齬をきたすことがあります。
※「齟齬をきたす」とは、食い違いが生じ、物事がうまく進まなくなることです。
BIOS を最新版にアップデートすることで、OS との互換性が向上し、これまで解決できなかった問題が嘘のように解消されるケースが実際に報告されています。
これは、PC メーカーが OS の変更に対応するための修正を BIOS アップデートに含めているためです。
【重要】BIOSアップデートの前に必ず確認すべきこと
BIOS アップデートは非常に強力な解決策ですが、手順を誤ると PC が起動しなくなる(文鎮化する)リスクを伴います。 作業は自己責任で、細心の注意を払って行ってください。
準備・確認事項 | 説明 |
データのバックアップ | 万が一に備え、重要なデータは必ず外付け HDD やクラウドにバックアップしてください。 |
マザーボードの型番確認 | 間違った BIOS ファイルを使用すると PC が壊れます。型番は絶対に間違えないでください。Windowsキー + R を押して「ファイル名を指定して実行」を開き、「msinfo32」と入力して Enter を押すと、「システム情報」で「ベースボードの製造元」と「ベースボード製品」が確認できます。 |
電源の安定確保 | アップデート作業中の停電は致命的です。ノートPC の場合は ACアダプターとバッテリーの両方を接続し、デスクトップPC の場合は天候が安定している日に行うなど、電源が落ちない環境を確保してください。 |
メーカー公式サイトの利用 | BIOS ファイルは必ずお使いの PC またはマザーボードのメーカー公式サイトからダウンロードしてください。非公式サイトからダウンロードしたファイルには、ウイルスやスパイウェアなどの悪意のあるプログラムが仕込まれている可能性があります。また、古いバージョンであったり、ファイルが破損していたり、自分の PC モデルとは微妙に違うバージョンのファイルだったりする危険性があります。 |
BIOS を最新版にアップデートしたことが原因で Wi-Fi 等が使えなくなることもあります。
現在、多くの PC で使われているセキュアブート証明書(2011年版)が、2026年から順次有効期限切れを迎えます。そのため、現在メーカーがリリースしている BIOS には、既に新しいセキュアブート証明書(2023年版)が含まれている可能性があります。
BIOS アップデートの一般的な手順
メーカーやモデルによって手順は異なりますが、一般的な流れは以下の通りです。
- BIOSファイルのダウンロード:
- USBメモリの準備:
- FAT32 形式でフォーマットされた USBメモリを用意します。
- 解凍した BIOS ファイル(「.CAP」 「.ROM」などの拡張子)を USBメモリのルートディレクトリ(フォルダに入れない直下の階層)にコピーします。
- BIOS画面(UEFI)の起動:
- PC を再起動し、起動直後にメーカーロゴが表示されている間に「Delete」キーや「F2」キー(下記を参考にしてください)を連打してBIOS 画面に入ります。
- アップデートツールの実行:
- BIOS 画面の中から「EZ Flash」「Q-Flash」「M-Flash」といった名称のアップデートツールを探して起動します。
- ツールが USBメモリを認識したら、コピーした BIOS ファイルを選択します。
- アップデートの実行と待機:
- ファイルが正しいか最終確認のメッセージが表示されるので、確認して実行します。
- アップデート中は絶対にPCの電源を切ったり、USBメモリを抜いたりしないでください。
- 完了すると自動的に PC が再起動します。何度か再起動を繰り返すこともありますが、正常な動作です。
例えば筆者の環境の場合、BIOS の更新後、下記の手順を行います。
- BIOS 画面を開き、セキュアブートや CSM などの設定をメモ
- 筆者の環境では、Windows 11 を起動するためには「セキュアブート」は有効、「CSM」は無効である必要があります。
- 下記の画面で「UEFI BIOSを既定値に戻す」
- 「設定内容を保存して再起動」
- 再度 BIOS 画面を開き、セキュアブートや CSM の設定を確認
- メモしていた設定と異なれば設定を戻す
- 「設定内容を保存して再起動」をする
- Windows 11 を起動
主要マザーボードメーカーサポートページ:
一般的なメーカーのショートカットキーは次のいずれかのキーを使用します。
- Delete, ESC, F1, F2, F8, F9, F10, F12
パソコンの電源を ON にしたら、すぐにキーボードのショートカットキーを数回押してください。
一部のメーカーのショートカットキーを紹介しますので参考にしてみてください。
ショートカットキー | メーカー |
---|---|
F2 | Sony(ソニー),Dell(デル),Acer(エイサー),FUJITSU(富士通),Samsung(サムスン),ASUS(エイスース) |
F2 または F10 | HP |
F1 | ThinkPad |
ESC を押してから F1 を押す、または F2キー | TOSHIBA(東芝) |
F2 または Fn + F2 | Lenovo(レノボ) |
まとめ
Windows 11 のアップデート後にキーボード、Wi-Fi、Bluetooth が使えなくなるという深刻な問題は、複数の原因が考えられます。問題解決への近道は、簡単なものから段階的に対処法を試していくことです。
- ステップ1: まずは再起動やトラブルシューティングツールなど、基本的な対処法を試す。
- ステップ2: 次にシステムファイルの修復を試す。
- ステップ3: それでもダメなら、問題のアップデートをアンインストールして原因を切り分ける。
- 最終手段: 全ての方法が尽きた時、BIOS/UEFI のアップデートが根本的な解決策になる可能性がある。
特に、BIOS のアップデートは効果が高い反面、リスクも伴います。実行する前には必ずデータのバックアップを取り、お使いの PC メーカーの指示をよく読んでから、慎重に作業を進めてください。

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