少し前から X で話題になっていますが、Windows 11 の更新プログラム KB5062660 または KB5063878 のインストール後に大量のデータ(数十GB)の書き込みを行うと、一部の SSD が認識しなくなる不具合が発生しているようです。
筆者の環境では、2025/07/23(水)に KB5062660 を、2025/08/13(水)に KB5063878 インストールしていますが、今までに大量のデータの書き込みを行っても問題は発生していません。
既に更新を行っている方、怖くて更新を一時停止している方もいると思いますが、あくまでも一部の環境でのみ発生する不具合ですので、問題が発生していない場合は無理にアンインストールする必要はないと考えています。
心配な場合は、おすすめはしませんが、更新プログラムをアンインストールして一時的に更新を停止しましょう。
Microsoft は、この問題を認識しているようですが、正式には発表されていません。
ここからは筆者の推測ですが、ドライバーが関係しているのではないかと考えています。
今回の更新(KB5063878)では Windows ストレージ ポート ドライバーの情報漏えいの脆弱性を修正しており、「storport.sys」ドライバーが更新されています。
「storport.sys」は、Windows オペレーティングシステムにおいて、ストレージデバイスとのデータ転送を管理する非常に重要なシステムファイルです。
これは「Microsoft Storage Port Driver」の一部で、特にハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などの記憶装置とシステムの他の部分との間の通信を担っています。
具体的には、SATA、NVMe、RAID コントローラーなどの高性能なストレージインターフェースのハブとなるドライバーです。
「storport.sys」に問題があると、大量のデータをコピーする際に処理が極端に遅くなったり、途中でフリーズしたり、最終的にエラーで失敗したりすることがあります。
これは、「storport.sys」が SSD と CPU やメモリとの間のデータ転送を直接管理しているためです。
このドライバーが不安定になると、データの通り道が詰まったり、通信が途切れたりするイメージです。
特に、大量のデータを扱うコピー作業は、このドライバーに継続的な負荷をかけるため、問題が表面化しやすくなります。
「storport.sys」は、Windows が起動する際にストレージコントローラー(SSD が接続されているマザーボード上のチップ)を初期化し、接続されている SSD を「発見」する役割を担っています。
このドライバーが正しく動作しないと、Windows は SSD の存在自体を認識できなくなります。
その結果、以下のようなことが起こり得ます。
- 使用中に突然ドライブが見えなくなる。
- OS がインストールされている SSD が認識されないため、「Boot Device Not Found」などのエラーが表示される。
- ストレージコントローラーの項目に「!」マークが付く。
あくまでも推測であり、根本的な原因は不明ですので、Microsoft 公式の発表を待つのが賢明です。
2025/08/31 追記:Microsoft は一般には公表していませんが、今回の問題と更新プログラムの関係性を確認できなかったとのことです。
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2025/08/28 追記:
ここからは、海外メディアサイト Wccftech の報道を基に SSD の問題について解説します。
SSDコントローラー大手 Phison社は徹底的なテストの末、「Windows 11 のアップデート「KB5063878」および「KB5062660」が SSD を故障させるという事実は確認できなかった」と結論付けています。
Phison社によると、SNSなどで Windows 11 の「KB5063878」および「KB5062660」アップデートの公開後、SSD が文鎮化するという報告が相次ぎ、当初は Phison社製 SSD が標的となっていました。
しかし、その後の調査によると、別のメーカーの SSD でも同様の不具合が発生しているとの報告があったそうです。
Phison社は「影響を受ける可能性がある」と報告された自社製 SSD に対し、累計 4,500時間以上のテストを実施し、2,200回以上のテストサイクルを実施しましたが、最終的に、オンラインで報告されているような問題は発生していないとのこと。
Phison社は Wccftech に対し、適切な温度管理を行うことが、今回のような個別の問題を防ぎ、SSD 本来の性能と寿命を維持するための鍵であると強調しています。
筆者の個人的な考え
ここからは筆者の個人的な考えです。
SSD は HDD よりも熱に強く、熱による故障リスクも HDD より低いといわれています。しかし、どちらも高温は性能低下や寿命を縮める大きな原因になるため、適切な温度管理が重要です。
SSDの注意点
SSD は動作温度の上限が高いものの、熱を帯びやすいという特徴があります。特に NVMe M.2 タイプの SSD は非常に高速な分、高熱になりやすいです。
温度が 70℃ 近くになると、部品を守るためにサーマルスロットリングという機能が働き、意図的に性能を低下させます。
これにより、データの転送速度が急激に遅くなります。継続的な高温は、データを記録する半導体セルそのものの劣化を早め、寿命を縮める原因になります。
HDDの注意点
HDD は SSD よりも低い温度から危険になります。一般的に 50℃ を超えると要注意、60℃ を超えると故障率が著しく上昇すると言われています。
HDD の故障は突然発生することが多く、データの復旧が困難になるケースも少なくありません。
部屋の温度
今年の夏は記録的な猛暑となっており、室内も高温になりやすい状況が続いています。
負荷の高い作業を行うと、PC ケースの中は、CPU やグラフィックボードが発する熱でサウナのような状態になります。
通常時であればケースファンが外部の冷たい空気を取り込んで冷やせますが、室温そのものが高い場合、冷却効率は著しく低下します。
SSD の健康を保つための冷房(エアコン)の適切な温度は、25℃~27℃ が目安といわれていますが、PC の置き場所にも気を遣うと良いかもしれません。
暖かい空気は上に、冷たい空気は下に流れるので、PC は下の方に置くことをおすすめします。
ノートPC の場合は、下から風を当ててあげると冷えやすくなります。
Windows 11 に組み込まれている機能
Windows 11 では、バックグラウンド(裏)で自動で実行されているサービスが存在します。
例えば Windows Search サービスが実行されている場合、 ファイルの解凍やコピー、削除をする際に同時にインデックスを行うため、CPU や SSD への負荷が高くなります。
筆者はこの問題を以前から認識しており、今回の SSD の問題に多少関係しているのではないかと考えています。
そのため、個人的には Windows Search サービスを無効にすることをおすすめしています。
Windows 11 ファイルの解凍やコピー、削除をすると動作が異常に重くなる原因
また、Windows や アプリの起動を速くするための Prefetchファイルが、逆に Windows の起動やアプリの起動速度などに影響を与える場合があります。
不要な Prefetchファイルを削除するだけで、PC が快適になり、原因不明の不具合が治ることもあります。
数分で PC が軽くなる! 不要な Prefetchファイルだけを自動で削除するツール
