Windows 11 が突然起動しない、ブルースクリーンがループする、自動修復に失敗する…。
そんな「もしも」の致命的なトラブルが発生した時、PC を修復するための「命綱」となるのが「回復ドライブ」です。
この記事では、Windows 11 の「回復ドライブ」とは何なのか、その具体的な内容(どのファイルがコピーされるのか)、そして PC が正常なうちに必ず作成しておくべき回復ドライブの作成手順を詳しく解説します。
回復ドライブとは
回復ドライブとは、簡単に言うと、PC に大きな問題が発生し Windows が正常に動作しなくなったり起動ができなくなってしまった場合に、Windows を初期状態に戻すためのツールです。
回復ドライブは、USBメモリまたは SDカードに Windows を初期状態に戻すためのファイルを保存します。
たとえ Windows が起動しなくなっても、回復パーティション(Windows回復環境[WinRE])がなくても、回復ドライブから起動して Windows を初期状態に戻すことができます。
回復ドライブの具体的な内容
回復ドライブはクリーンインストールとは違い、回復ドライブの作成時に既に Windows Update でインストールされていた更新プログラムはそのまま保持されます。
作成時の Windows 11 の状態が保存されるため、半年~1年に1回作り直すことをおすすめします。
※Microsoft は、年に 1回の作成を推奨しています。
注意することは、個人用ファイルおよび Windows 11 の初期の状態でインストールされていなかった、つまり、個人が後からインストールしたアプリケーションは保存されません。
個人用ファイルとは、個人用フォルダーに保存されているファイル、ユーザーアカウント、ユーザーの設定などです。
個人用フォルダーとは、「ダウンロード」「ドキュメント」「ピクチャ」「ビデオ」「ミュージック」「デスクトップ」です。
つまり、簡単に言うと、回復ドライブは Windows 11 を最新の状態を保持したまま初期状態に戻すためのものですね。
PC の工場出荷時の状態に戻るけど更新プログラムは最新のものが適用されている、と言った方がわかりやすいでしょうか。
回復ドライブで PC を初期状態に戻すと:
- 現在インストールされている更新プログラムは保持される
- 「ダウンロード」「ドキュメント」「ピクチャ」「ビデオ」「ミュージック」「デスクトップ」フォルダーに保存していたファイルは保持されずに削除される
- 個人が後からインストールしたアプリケーションは削除される
- アカウント情報はリセットされるので、ユーザーの設定も初期状態に戻る
- ドライバーや PC メーカー独自の設定は、PC の工場出荷時の状態(または回復ドライブ作成時の状態)に戻ります。
Microsoft アカウントを使用していたのであれば、初期状態に戻した後の初期設定で同じアカウントにサインインし、ファイルやアプリ、設定等を復元することができます。
参考になると思いますので、初期状態に戻した直後の初期設定で設定等を復元した状態を載せておきます。
- アプリは、実際に確認してみましたが、正確にはインストールされていたアプリのショートカットのみが復元されました。(デフォルトのアプリ以外はダウンロードが必要になります)
- 一部のアプリはインストールされている。(プリインストールされていたアンチウィルス・セキュリティ対策ソフトを含む)
- 一部の設定はデフォルトに戻ります。(システムのプロパティの設定など)
回復ドライブにある「sources」フォルダー内のファイルとフォルダーの役割
1. 「boot.wim」 (wim Archive)
- これは、回復ドライブ自体を起動するための「小さな Windows」(Windows PE / WinRE)です。
- PC が起動しないときに、この USBメモリから起動すると、まずこの「boot.wim」が読み込まれ、青い「オプションの選択」画面(トラブルシューティングや「PCを初期状態に戻す」などが選べる「回復環境(WinRE)」の画面)が表示されます。
Win11 セーフモードなどが選択できる「回復環境(WinRE)」の開き方
2. 「Reconstruct.WIM」 (および .WIM2, .WIM3…) (wim Archive)
- これが「PC の本体(バックアップ)」です。
- 「install.wim」(インストールメディアに含まれる素の Windows)とは異なり、これは回復ドライブ作成時点のWindows システム、更新プログラム、メーカーのドライバー、プリインストールソフトなどがすべて含まれた「スナップショット(復元イメージ)」です。
- ファイルが「.WIM2」、「.WIM3」…と分割されているのは、USBメモリの一般的なフォーマット(FAT32)が 4GB 以上の単一ファイルを扱えないため、巨大なイメージファイルを分割して保存しているからです。
3. 「$PBR_ResetConfig.xml」と「$PBR_Diskpart.txt」
- これらは「設定ファイル」と「スクリプト」です。
- 「PBR」は「Push-Button Reset(プッシュ ボタン リセット = PC を初期状態に戻す)」の略です。
- $PBR_ResetConfig.xml: PC を初期状態に戻す際に、どのパーティションをどう扱うか、どの言語設定を適用するか、といった設定情報が書かれています。
- $PBR_Diskpart.txt: PC のハードディスク(SSD)をどのようにフォーマットし直すかを指示する、「diskpart」コマンドのスクリプトです。
4. 「Customizations」と「OEM(フォルダー)」
- これらは、PC メーカー(例:Fujitsu, MouseComputer など)が追加した、独自のドライバーや設定、ロゴ画像、プリインストールソフトなどを格納しているフォルダーです。
- 「PC を初期状態に戻す」際に、これらのファイルが使われ、PC が「工場出荷時」の状態に復元されます。
回復ドライブの作成方法
- 回復ドライブの作成に必要な USBメモリまたは SDカードの容量は 32GB です
- 筆者の環境では、2025/11/11 にリリースされた「KB5068861」をインストールした状態で作成後、約 20GB 使用していました。
- SDカードを使用する場合は、USB接続の SDカードリーダーをご使用ください
- 32GB以上のものを用意して PC に接続し、ノートパソコンの場合は必ず ACアダプタを接続しておきましょう
- PC から離れる場合、作成途中で PC がスリープしてしまう可能性がありますので、自動でスリープしないように設定しておくことをおすすめします
※回復ドライブの作成時間は環境により変わります。(筆者の環境では 1時間12分かかりました)
1.PC が自動的にスリープ状態になる時間を変更する
1.Windowsキー + R を押して「ファイル名を指定して実行」を開き、次のコマンドを入力して Enter を押します。
powercfg.cpl
2.「電源オプション」が開きますので、左側にある「コンピューターがスリープ状態になる時間を変更」をクリックします。
3.「プラン設定の編集」が開きますので、「コンピューターをスリープ状態にする」の時間を確認してください。
4.「コンピューターをスリープ状態にする」の時間を「適用しない」に変更し、「変更の保存」をクリックします。
2.Windows Update を一時停止しておく
回復ドライブの作成中に Windows Update が行われると、作成が失敗してしまう場合がありますので、一時的に Windows Update を停止しておきましょう。
Win10/Win11 Windows Update の一時停止方法
3.回復ドライブを作成する
この PC では回復ドライブを作成できませんと表示された場合
下記のメッセージが表示された場合は、おそらく WinRE が無効になっているためです。
この PC では回復ドライブを作成できません
必要ないくつかのファイルが見つかりません。PC が起動できないときに問題をトラブルシューティングするには、Windows インストールディスクまたはメディアを使用してください。
まず WinRE が有効であるかを確認してみましょう。
1.コマンドプロンプトを管理者として開き、次のコマンドを入力して Enter を押します。
reagentc /info
2.「Windows RE の状態」の右側に「Enabled」と表示されていれば有効です。

もし無効になっていたら、まず次のコマンドを実行し、WinRE を有効化できるか試してみてください。
reagentc /enable
有効化できない場合は、次のページを参考に、 ISO ファイルから Windows RE イメージ(Winre.wim)を取り出して WinRE を有効化してください。
1.Windowsキー + R を押して「ファイル名を指定して実行」を開き、次のコマンドを入力して Enter を押します。
RecoveryDrive.exe
2.「ユーザーアカウント制御」が表示されますので、「はい」をクリックします。

3.「回復ドライブの作成」が表示されたらそのまま「次へ」をクリックします。
4.USBメモリのチェックが始まりますので、しばらくお待ちください。
5.「USB フラッシュドライブの選択」が表示されますので、回復ドライブに使用する USBメモリのドライブを選択して「次へ」をクリックします。
必ず「使用可能なドライブ」に表示されているドライブが回復ドライブ使用する USBメモリのドライブであることを確認してください。

複数の USBメモリを接続している場合、複数のドライブが表示されます。
中にあるデータはすべて削除されますので、間違ったドライブを選択しないように注意してください。
6.最後の確認画面が表示されますので、心配な場合は左上の矢印「←」をクリックして 1つ前に戻り、確認をしてください。
問題がなければ「作成」をクリックします。
7.回復ドライブの作成が始まりますので、完了するまでお待ちください。
※作成中は他の作業を行っても構いませんが、ゲームなど PC に大きな負荷がかかるものは避けてください。
8.「回復ドライブの準備ができました」と表示されたら回復ドライブの作成は完了です。
「完了」をクリックして「回復ドライブ」を終了しましょう。
USBメモリを取り外す際には、必ず「ハードウェアの安全な取り外し」を行ってから取り外してください。
回復ドライブを使用して Windows 11 を初期状態に戻す方法
ノートパソコンの場合は必ず ACアダプタを接続しておきましょう。
1.BIOS(UEFI)画面を開いて起動順序を USBメモリを一番上に変更
回復ドライブ用の USBメモリを接続して PC を開き、BIOS(UEFI)画面を開いてください。
※BIOS(UEFI)画面の開き方は次のページを参考にしてみてください。

例:筆者の PC の UEFI 画面
1.「起動」タブを開きます。
2.「ブートドライブ #1」をクリックします。
3.回復ドライブ用の USBメモリを選択します。
4.すると、「ブートドライブ #1」が USBメモリに変更されます。
5.F10 キーを押し、内容を保存して再起動してください。
2.Windows 11 を初期状態に戻す
1.初めに「キーボードレイアウトの選択」が表示されますので、ここでは「Microsoft IME」を選択します。
2.「オプションの選択」では、「ドライブから回復する」を選択します。
※「トラブルシューティング」を選択して別のオプションを選択することもできます。
3.「ドライブから回復する」では、「ファイルの削除のみ行う」を選択します。
4.「この操作を行うと」をよく読み、「回復」を選択すると Windows 11 の再インストール(初期状態に戻す)が開始します。
5.しばらくすると PC が自動で再起動され、手順1 の「キーボードレイアウトの選択」が表示されます。
6.「Microsoft IME」を選択し、「オプションの選択」で「PC の電源を切る」を選択します。
7.PC を起動し、BIOS(UEFI)画面を開いて起動順序を元に戻して再起動してください。
8.すると、Windows 11 のインストールが続行されますので、完了するまでお待ちください。
9.インストールが完了すると初期設定画面が表示されますので、初期設定を進めてください。

























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