Windows のカスタマイズや不具合修正のため、解説サイトの指示通りにレジストリを編集しようとしたら、「エラーを書き込めません」や「アクセスが拒否されました」と表示されて、先に進めなくなった…。
そんな経験はありませんか?これは、たとえ管理者権限で操作していても発生する、非常に厄介な問題です。Windows は、システムの安定性を守るため、特に重要なレジストリキーを「TrustedInstaller」という特別なアカウントで固く保護しています。
この記事では、その鉄壁のガードを安全に解除し、あなた自身のアカウントにレジストリのアクセス許可(所有権)を与え、目的の編集を可能にするための、正確な手順を詳しく解説します。
レジストリのアクセス許可を変更するメリット
レジストリのアクセス許可を変更する最大のメリットは、通常は保護されていて変更できない、Windows のより深い設定をカスタマイズできるようになることです。
これにより、例えば以下のような高度な調整が可能になります。
- エクスプローラーの高速化: 標準の圧縮(zip)フォルダー機能を無効化し、動作を軽くする。
- システムの修復: 破損してしまった「Windows セキュリティ」の関連キーを修正し、正常な状態に戻す。
このように、アクセス許可の変更は、PC のパフォーマンス改善やトラブル解決のための、強力な武器になり得ます。
【最重要】デメリットと、絶対に守るべき注意事項
しかし、この強力な武器は、同時に非常に大きなリスクを伴います。
アクセス許可によって保護されているキーは、例外なくシステムの動作に不可欠な、極めて重要なものです。これらのキーを誤って編集・削除してしまうと、最悪の場合、Windows が起動しなくなるなど、取り返しのつかない事態に陥る可能性があります。
ですので、アクセス許可の変更を行う前には、以下の準備を必ず行ってください。
- レジストリのバックアップ: 編集したいキーを右クリックし、「エクスポート」で必ずバックアップを取る。
- システムの復元ポイント作成: PC 全体を、作業前の安全な状態に戻せるようにしておく。
- 基本知識の習得: まだ読んでいない場合は、必ず「Win10 レジストリの予備知識」の記事に目を通し、レジストリの基本構造とリスクを理解しておく。
レジストリの操作を間違えると、システムが起動できなくなるなどの不具合が起きる可能性があります。事前にシステムの復元などでバックアップを取り、自己責任で行うようお願いします。
- システムの復元ポイント作成方法及び復元方法
- レジストリエディターの開き方及びバックアップ方法
- Windows 11/10 レジストリの予備知識|概念・開き方・内部構成
- Windows 11レジストリの所有権を取得し、アクセス許可を変更する方法
レジストリのアクセス許可を変更する方法
※管理者権限のあるユーザーアカウントで Windows 11 にサインインしている必要があります。
レジストリエディターを開き、アクセス許可を変更したいキーの上で右クリック>「アクセス許可」をクリックします。
例えば、「HKEY_CURRENT_USER\SampleKey」キーにあるサブキー「Sample1」キーのアクセス許可を変更したい場合、「Sample1」キーの上で右クリック>「アクセス許可」をクリックします。
Sample1 のアクセス許可が開きますので、「グループ名またはユーザー名」の下にある「Administrators(*****\Administrators)」を選択します。
「アクセス許可」にある「フルコントロール」の「許可」にチェックがなければチェックを付けて OK をクリックします。
「読み取り」権限: 値の読み取りのみ可能であり、編集およびキーや値の追加、削除はできません。わかりやすく言うと、図書館の閲覧席で「貴重書を読む」ようなものです。本(値)の内容を見ることはできますが、書き込んだり(編集)、ページを破ったり(削除)、新しいページを挟んだり(追加)することは、一切許可されていません。
「フルコントロール」権限: 値の読み取り、編集およびキーや値の追加、削除ができます。わかりやすく言うと、あなたがその本の「著者」になるようなものです。内容を読むことはもちろん、文章を書き換え(編集)、新しい章を追加し(キーや値の追加)、不要なページを削除する、すべての権限があなたに与えられます。
エラーがなければそのまま「Sample1」キーを編集できますが、「Windows セキュリティ」の警告画面が表示され、アクセスが拒否される場合があります。
その場合は「キャンセル」をクリックしてください。
アクセスが拒否される理由は、所有権が今のユーザーよりも権限の高いユーザー、または他のユーザーにあるためです。
所有権を Administrators(管理者権限のあるユーザーアカウントすべて) に変更するために「Sample1 のアクセス許可」の下にある「詳細設定」をクリックします。
※Administrators でなくても、現在サインインしているユーザー名でも構いません。
「Sample1 のセキュリティの詳細設定」が開きますので、「所有者」の右側にある「変更」をクリックします。
「ユーザー または グループ の選択」が開きますので、「詳細設定」をクリックします。
「ユーザー または グループ の選択(詳細設定)」が開きますので、「検索」をクリックします。
すると、下の検索結果にユーザー名が表示されますので、「Administrators」を選択して OK をクリックします。
「ユーザー または グループ の選択」が表示され、「選択するオブジェクト名を入力してください (例)」に「*****\Administrators」と表示されたのを確認したら OK をクリックします。
「Sample1 のセキュリティの詳細設定」に戻りますので、所有者が変更されたのを確認したら OK をクリックします。
これでアクセスが可能になりましたので、「アクセス許可」にある「フルコントロール」の「許可」にチェックを入れて OK をクリックします。
以上でレジストリのアクセス許可の変更は完了です。
「サブコンテナーとオブジェクトの所有者を置き換える」とは?
「サブコンテナーとオブジェクトの所有者を置き換える」とは、所有者を変更する際に、そのキーの中のサブキーの所有者も同時に変更する機能です。
例えば、「HKEY_CURRENT_USER\Sample1」キーにサブキー「Sample1_1」キーがある場合、「Sample1」キーの所有者を変更する際に「サブコンテナーとオブジェクトの所有者を置き換える」にチェックを入れて OK をクリックすると、「Sample1_1」キーの所有者も同時に変更されます。
わかりやすく説明すると:
- 一言で言うと: 「中のキーも全部、持ち主を同じにする」
- 解説: これは、親フォルダーの持ち主(所有者)を変更した際に、その中にある子フォルダーすべての持ち主も、強制的に同じ人に変更する、という意味のチェックボックスです。ここにチェックを入れないと、親フォルダーの持ち主だけが変わり、中の子フォルダーは元の持ち主のままになってしまいます。
「子オブジェクトのアクセス許可エントリすべてを、このオブジェクトからの継承可能なアクセス許可エントリで置き換える」とは?
「子オブジェクトのアクセス許可エントリすべてを、このオブジェクトからの継承可能なアクセス許可エントリで置き換える」とは、アクセス許可を変更する際に、そのキーの中のサブキーのアクセス許可も同時に変更する機能です。
例えば、「HKEY_CURRENT_USER\Sample1」キーにサブキー「Sample1_1」キーがある場合、「Sample1」キーのアクセス許可を変更する際に「子オブジェクトのアクセス許可エントリすべてを、このオブジェクトからの継承可能なアクセス許可エントリで置き換える」にチェックを入れて OK をクリックすると、「Sample1_1」キーのアクセス許可も同じように変更されます。
そして、サブキー「Sample1_1 のセキュリティの詳細設定」を見てみると、「継承元」が「CURRENT_USER\SampleKey\Sample1」となります。
わかりやすく説明すると:
- 一言で言うと: 「中のキーも全部、親と同じルールにする」
- 解説: これは、親フォルダーのルール(アクセス許可)を変更した際に、中の子フォルダーがもし独自のルールを持っていたとしても、それをすべて上書きし、親と全く同じルールを強制的に適用する、という意味のチェックボックスです。
継承元がないキーは「なし」と表示されます。
よくある質問
- レジストリ値の編集が完了したらアクセス許可は元に戻した方がいいですか?
-
はい。できる限り元に戻した方が良いでしょう。上でも説明したように、アクセス許可が必要なレジストリキー(値)はシステムにとって重要なキーであるため、誤って編集や削除をしないように、アクセス許可を元に戻すことをおすすめします。
- 所有者を TrustedInstaller から Administrators に変更後、TrustedInstaller に戻すことができません。どうすればいいですか?
-
所有者を TrustedInstaller に戻したい場合は、「ユーザー または グループ の選択」の「選択するオブジェクト名を入力してください (例)」に直接次のコードを入力して OK をクリックしてください。
NT Service\TrustedInstaller
- 特に注意することは?
-
特に注意することは、わからない値の編集、削除はしないこと。よくあるのは、あるサイトで紹介されていたレジストリ値を安易に削除して後悔してしまうことです。バックアップをしていないレジストリ値は元には戻せませんし、Windows が起動できなくなっても自己責任ですので注意してください。
















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