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Windows 11 のネットワークを最適化して有線LAN の通信速度を改善する

今回は、Windows 11 のネットワークを最適化して有線LAN の通信速度を改善する方法を紹介します。

Windows 11 のデフォルトの設定のまま使用している場合、一部の環境ではインターネット速度が抑えられ、最大限まで速度が出ない場合があります。

このページで紹介するのは、筆者が検証して効果のあった方法です。

Windows 11 のネットワークを最適化することで、以下の点が改善される可能性があります。設定を行う際は、注意事項をよくお読みください。

  • WEBページの読み込み速度の向上
  • ファイルのダウンロード速度の向上
  • ファイルのアップロード速度の向上
  • オンラインゲームのラグ(遅延)の軽減

Wi-Fi(無線LAN)でも効果がありますが、一部の設定は有線LANとWi-Fiで異なる場合があります。

目次

Windows 11 のネットワークを最適化する方法と注意事項

ネットワーク設定とインターネット設定

1.DNSサーバーの変更

デフォルトの設定では、ご自分が契約しているプロバイダーの DNSサーバーアドレスが自動的に割り当てられています。

DNSサーバーとは、ドメイン名を IPアドレスに変換する役割を担っています。

わかりやすく説明すると、

  1. あなたが WEBサイト「google.com(ドメイン名)」を見たくてアクセスしたとします。
  2. すると、コンピューターは DNSサーバーに「google.com の住所はどこですか?」と聞きます。
  3. DNSサーバーは「google.com の住所は 172.217.161.206(IPアドレス) だよ」と教えてくれます。
  4. コンピューターはその住所を使って、google.com の WEBサイトを表示します。

プロバイダーの DNSサーバーのまま使用することに問題はありませんが、プロバイダーによってはドメイン名を IPアドレスに変換する処理速度が遅い場合があります。

プロバイダーの処理速度が遅い場合、 ドメイン名が IPアドレスに変換されるまでに時間がかかり、結果的に WEBサイトの表示が遅くなります。

そこでおすすめなのが、高速なDNSサーバーに変更することです。

高速なDNSサーバーに変更することで、ドメイン名が IPアドレスに変換されるまでの時間が短縮され、WEBサイトの表示が速くなる可能性があります。

筆者がおすすめするのは、世界的に有名な無料のパブリックDNSサーバー「Cloud flare Public DNS」です。

DNSサーバーを「Cloud flare Public DNS」に変更するには、

1.タスクトレイ(通知領域)のネットワークのアイコンを右クリック>「ネットワーク設定とインターネット設定」をクリックします。

タスクトレイ(通知領域)のネットワークのアイコン
タスクトレイ(通知領域)のネットワークのアイコン
ネットワークアイコンの右クリックメニュー
ネットワークアイコンの右クリックメニュー

2.「ネットワークとインターネット」が開きますので、「プロパティ」をクリックします。

「設定」>「ネットワークとインターネット」
「設定」>「ネットワークとインターネット」

3.「DNS サーバーの割り当て」の右側にある「編集」をクリックします。

「設定」>「ネットワークとインターネット」>「イーサネット」
「設定」>「ネットワークとインターネット」>「イーサネット」

4.「DNS 設定の編集」が表示されますので、「自動(DHCP)」をクリックして「手動」を選択してください。

DNS 設定の編集
DNS 設定の編集

5.「IPv4」「IPv6」共に「オフ」となっていますので、「オン」に変更してください。

DNS 設定の編集
DNS 設定の編集

6.すると、各項目が表示され入力できるようになりますので、「優先 DNS」に「優先DNSサーバー」「代替え DNS」に「代替DNSサーバー」のアドレスを入力してください。

DNS 設定の編集
DNS 設定の編集
Cloud flare Public DNS優先DNSサーバー代替DNSサーバー
IPv4 のアドレス1.1.1.11.0.0.1
IPv6 のアドレス2606:4700:4700::11112606:4700:4700::1001

7.「IPv4」「IPv6」両方入力出来たら「保存」をクリックします。

すると、下の画像のように変更が反映されますので確認してみてください。

「設定」>「ネットワークとインターネット」>「イーサネット」
「設定」>「ネットワークとインターネット」>「イーサネット」

※DNSサーバーの変更は既に反映されていますので、パソコンを再起動する必要はありません。

2.不要なコンポーネントを無効化

ネットワークアダプターは、デフォルトのままでは必要のないコンポーネントも有効化されています。

「要らない部品がくっついている」と言うとわかりやすいと思います。

必要のないコンポーネントが有効化されているということは、その分余計なネットワーク トラフィック(一定時間にネットワークを流れるデータ量)が増加します。

これを回避することでネットワークが混雑せず、スムーズにデータが流れるようになります。

わかりやすく例えると、交通量が少ないほど車はスムーズに走れますよね?それと同じような考えです。

不要なコンポーネントを無効化するには、

1.タスクトレイ(通知領域)のネットワークのアイコンを右クリック>「ネットワーク設定とインターネット設定」をクリックします。

2.「ネットワークとインターネット」が開きますので、「ネットワークの詳細設定」をクリックします。

「設定」>「ネットワークとインターネット」
「設定」>「ネットワークとインターネット」

3.現在使用しているネットワークアダプターの名前をクリックします。

「設定」>「ネットワークとインターネット」>「ネットワークの詳細設定」
「設定」>「ネットワークとインターネット」>「ネットワークの詳細設定」

4.「その他のアダプターオプション」の右側にある「編集」をクリックします。

「設定」>「ネットワークとインターネット」>「ネットワークの詳細設定」
「設定」>「ネットワークとインターネット」>「ネットワークの詳細設定」

5.すると、ネットワークアダプターのプロパティが表示されますので、不要なコンポーネントのチェックを外します。

ネットワークアダプターのプロパティ
ネットワークアダプターのプロパティ

一般的に必要なコンポーネントは次の 4つのみです。

  • Microsoft ネットワーク用クライアント
  • Microsoft ネットワーク用ファイルとプリンター共有
  • インターネット プロトコル バージョン 4 (TCP/IPv4)
  • インターネット プロトコル バージョン 6 (TCP/IPv6)

6.不要なコンポーネントのチェックをすべて外したら OK をクリックします。

ネットワークアダプターのプロパティ
ネットワークアダプターのプロパティ

お使いの環境により、無効化したコンポーネントが必要な場合もあります。各項目をクリックすると下に説明が表示されますので、よくお読みください。

通常の使用であれば、上記の 4つのコンポーネント以外は必要ありませんが、無効化後に不具合が発生した場合は元に戻しましょう。

ネットワークドライバーの設定

※ネットワークドライバーは最新のバージョンをインストールしておきましょう。

受信バッファと伝送バッファ

受信バッファと伝送バッファは、既定では低い値に設定されていますが、 これらの値を高く設定するとネットワークのパフォーマンスを最大限に高めることができます。

受信バッファはダウンロード速度に影響し、伝送バッファはアップロード速度に影響します。

Windows 11 の場合、16GB 以上を搭載しているのであれば、受信バッファと伝送バッファを 4GB(4096)以上にしても問題ないでしょう。

パソコンに搭載している物理メモリーの容量が少ない環境では、値を高く設定しすぎるとシステムが不安定になる可能性があります。

Windows 11 では、特に何もしていなくても多くのメモリーを消費しています。そのため、物理メモリーの容量が 8GB 以下の場合は、デフォルトのまま変更しないことをおすすめします。

設定できる受信バッファの最大値はネットワークアダプターにより異なりますが、物理メモリーの容量の 1/4 を超えない程度で設定してみてください。

MTU値の設定

MTU値とは

MTU値とは、インターネットでデータを送るときの、1回で送れるデータ(パケット)の最大の大きさのことです。

Windows 11 では、MTU値はデフォルトで 1500 に設定されており、通常は変更する必要はありません。

しかし、契約しているプロバイダーにより MTU値が 1500 以下に制限されている場合があります。

その場合、デフォルトの 1500 では大きすぎるということになりますね。

MTU値が大きすぎると、ネットワーク上でパケットが分割(断片化)されることがあります。

簡単に言うと、例えば MTU値が 1454 に制限されていたとします。

1454 を道幅(1454cm)と例えると、幅 1500cm のデータは大きすぎて 1454cm の道を通ることができません。

この大きなデータを小さなデータに分けることにより、狭い道を通ってデータをスムーズに送ることができるようになります。

そして、データの送り先で小さく分割されたパケットを元に戻します。これを「フラグメント化や断片化」と呼んでいます。

パケットを分割したり元に戻す処理にはある程度の時間がかかりますので、頻繁に断片化が発生すると通信速度の低下につながることがあります。

そのため、断片化が起きないように明確な MTU値を Windows に教えておくことで、通信速度の低下を防ぐことができます。

MTU値の確認と変更方法

MTU値が制限されているかを確認するには、次のサイトがおすすめです。

speedguide.net – SG TCP/IP Analyzer

ページを開くと、「MTU = 1460」のように表示されますので確認してみてください。

speedguide.net - SG TCP/IP Analyzer
speedguide.net – SG TCP/IP Analyzer

MTU値が「1500」と表示されていれば設定を変更する必要はありません。

MTU値が「1500」以下の場合は、次の手順で MTU値を変更してみてください。

1.スタートボタンを右クリックし、「ターミナル(管理者)」を開きます。

2.次のコマンドを入力して Enter を押します。

Get-NetIPInterface

すると、ネットワークインターフェイスの一覧が表示されます。

「NlMtu(Bytes)」の下に表示されているのが MTU値です。

Windows PowerShell
Windows PowerShell

3.ここで確認するのは、現在接続しているネットワークインターフェイス(ネットワークアダプター)の名前の左側にあるインデックス番号です。

下の画像では「12」と表示されていますが、環境により番号は違います。また、パソコンを再起動した後に番号が変わる場合もあります。※右側の IPv4/IPv6 は気にする必要はありません。

Windows PowerShell
Windows PowerShell
現在接続しているネットワークインターフェイス(ネットワークアダプター)の名前
現在接続しているネットワークインターフェイス(ネットワークアダプター)の名前

「設定」>「ネットワークとインターネット」を開くと確認できます。

4.次のコマンドを入力して Enter を押し、MTU値を変更します。

Set-NetIPInterface -InterfaceIndex インデックス番号 -NlMtuBytes MTU値

例えば、インデックス番号が「12」で MTU値を「1460」に設定したい場合は

Set-NetIPInterface -InterfaceIndex 12 -NlMtuBytes 1460

となります。

Windows PowerShell
Windows PowerShell

5.変更された MTU値を確認するため、もう一度次のコマンドを入力して Enter を押してみましょう。

Get-NetIPInterface
Windows PowerShell
Windows PowerShell

ネットワークインターフェイス(ネットワークアダプター)の名前の右側の MTU値が変更されましたね?

これで MTU値の設定は完了しましたので、Windows PowerShell はそのまま閉じず、グローバル TCP パラメーターの設定に進んでください。

TCP パラメーターの設定

TCP パラメーターの設定は一般的に変更する必要はありませんが、筆者の環境で検証した結果、冒頭でも述べたように以下の点が改善されました。

  • WEBページの読み込み速度の向上
  • ファイルのダウンロード速度の向上
  • ファイルのアップロード速度の向上
  • オンラインゲームのラグ(遅延)の軽減

Window 11 の初期設定では、特定の環境に対して最適化がされていません。

お使いの環境に合わせてパラメーターを変更することで、現在の通信速度が劇的に向上する場合があります。

グローバル TCP パラメーターの設定

まず現在の設定を確認するために次のコマンドを入力して Enter を押してください。

netsh int tcp show global

すると、現在のグローバル TCP パラメーターの一覧が表示されます。

Windows PowerShell
Windows PowerShell

Window 11 バージョン 24H2 のグローバル TCP パラメーターの既定値

筆者の環境で確認をしてみると、Window 11 バージョン 24H2 のグローバル TCP パラメーターは既定で次のように設定されています。

名前状態(Window 11 バージョン 24H2 の既定値)
Receive-Side Scaling 状態enabled
受信ウィンドウ自動チューニング レベルnormal
アドオン輻輳制御プロバイダーdefault
ECN 機能disabled
RFC 1323 タイムスタンプenabled
初期 RTO1000
Receive Segment Coalescing 状態enabled
非 Sack の Rtt 回復性disabled
SYN の最大再送信数4
Fast Openenabled
Fast Open フォールバックenabled
HyStartenabled
Proportional Rate Reductionenabled
ペーシング プロファイルoff

各グローバル TCP パラメーターの詳細

名前詳細
Receive-Side Scaling 状態受信側スケーリング (RSS):
RSS は、ネットワーク データの受信時に複数のプロセッサ コアが並列処理を実行し、ネットワーク スループットを向上させるネットワーク パフォーマンス最適化テクノロジです。このテクノロジーは、着信データ パケットを異なるプロセッサ コアに分散し、単一のプロセッサ コアの負担を軽減して処理効率を向上させます。これは、マルチコア プロセッサ システムで特に効果的です。
受信ウィンドウ自動チューニング レベル受信ウィンドウの自動調整 (Autotuninglevel):
Autotuninglevel は、受信バッファのサイズを自動的に調整するための TCP プロトコルの設定です。受信ウィンドウのサイズによって、送信者が確認応答せずに残すことができるデータの最大量が決まります。バッファ サイズを自動的に調整することで、特に高遅延および高帯域幅のネットワーク環境でパフォーマンスを最適化できます。ネットワークの状況に応じて、システムは受信ウィンドウのサイズを動的に調整し、データ転送の効率を向上させます。
アドオン輻輳制御プロバイダーアドオン輻輳制御プロバイダー:
アドオン輻輳制御プロバイダーは、ネットワークの輻輳を効率的に管理し、パフォーマンスを向上させるための重要な機能です。適切なプロバイダーを選択することで、より快適なネットワーク環境を実現できます。
※Windows 11 では、補足テンプレートに基づく TCP パラメーターにて変更可能。
※輻輳とはネットワークの混雑を意味します。
ECN 機能明示的輻輳通知 (ECN):
ECNは、ネットワーク輻輳が発生したときに、単にパケットをドロップするのではなく、ネットワーク デバイス (ルーターなど) がデータ送信者に明示的に通知できるようにするネットワーク輻輳制御メカニズムです。このメカニズムは、パケット損失による再送信を回避し、ネットワーク遅延を削減するのに役立ちます。 ECN は、IP ヘッダーのフラグ ビットで情報を渡すことにより、TCP 送信者が送信速度を下げ、輻輳を緩和するのに役立ちます。
RFC 1323 タイムスタンプTCP タイムスタンプ:
TCP タイムスタンプは、伝送効率と遅延測定を改善するために使用される TCP プロトコルの機能です。各 TCP パケットにタイムスタンプを追加することで、受信側はパケットの往復時間 (RTT) を測定し、これに基づいて再送信タイムアウト (RTO) と送信戦略を調整できます。タイムスタンプを有効にすると、ネットワークの状態が変化した場合のパフォーマンスを最適化できます。
初期 RTOTCP 再送制御 (InitialRTO):
InitialRTO は、TCP プロトコルの初期再送タイムアウト (RTO、再送タイムアウト) を設定するために使用される値です。この値は、TCP 再送信メカニズムの初期待機時間を決定します。指定された時間内にデータ パケットが確認されない場合、送信者はデータ パケットを再送信します。この値は通常デフォルト値に設定されており、ネットワーク上でパケット損失が発生した場合の再送信動作を効果的に制御できます。
Receive Segment Coalescing 状態受信セグメント結合 (RSC):
RSC は、データ パケットの処理回数を減らすために使用されるネットワーク最適化テクノロジーです。ネットワークの受信側では、複数の小さなセグメントが受信されると、RSC はこれらのセグメントを 1 つの大きなセグメントにマージします。これにより、処理回数とメモリ アクセス回数が削減され、特に高速ネットワークでのネットワーク受信効率が向上します。
非 Sack の Rtt 回復性非 SACK クライアント RTT リカバリ (NonsackRTTResiliency):
非 SACK RTT リカバリとは、TCP プロトコルにおいて、クライアントが SACK (選択的確認応答) をサポートしていない場合、従来の確認方法を使用してデータ パケットを確認し、RTT (ラウンドトリップ時間) を測定することを意味します。この場合、TCP プロトコルは従来の ACK メカニズムに基づいて RTT 計算を再開します。
SYN の最大再送信数SYN 再試行回数 (MaxSYNRetransmissions):
MaxSYNRetransmissions はTCP プロトコルで指定されます。これは、接続確立プロセス中に送信者が SYN (同期) パケットを再試行できる最大回数です。受信側が指定された時間内に SYN パケットに応答しない場合、送信側は SYN パケットの送信を再試行します。この値は、接続確立の信頼性を確保するための再試行の最大回数を指定します。
Fast OpenTCP Fast Open (FastOpen):
TCP Fast Open (TFO)は、3 ウェイ ハンドシェイクが完了するのを待たずに、接続確立プロセス中にクライアントがサーバーにデータを送信できるようにする最適化テクノロジです。 TCP Fast Open は、ハンドシェイク プロセスの時間を短縮することで、特に高遅延ネットワークでの接続確立の遅延を削減できます。3 ウェイ ハンドシェイクとは:
インターネットで2つのコンピュータが通信を始めるとき、最初に「こんにちは」のあいさつを3回やり取りします。これを3ウェイハンドシェイクといいます。
最初の「こんにちは」:
コンピュータAがコンピュータBに「通信したいです!」と伝えます。
2回目の「こんにちは」:
コンピュータBがコンピュータAに「通信OKですよ!」と伝えます。
3回目の「こんにちは」:
コンピュータAがコンピュータBに「ありがとう!通信を始めましょう!」と伝えます。
この3回のあいさつが終わって、初めてコンピュータAとコンピュータBは、データをやり取りできるようになります。
Fast Open フォールバックTCP 高速オープン フォールバック:
FastOpenFallbackは、ターゲット サーバーが TCP 高速オープン (TFO) をサポートしていない場合のフォールバック メカニズムです。ターゲット サーバーが TFO をサポートしていない場合、クライアントは従来の 3 ウェイ ハンドシェイク プロセスにフォールバックします。このメカニズムにより、TFO をサポートしていない環境でも接続が正常に確立されることが保証されます。
HyStartスロー スタート アルゴリズム (HyStart):
HyStart は、スロー スタート フェーズ中に輻輳ウィンドウの増加をより慎重に制御することでネットワーク輻輳を軽減する TCP スロー スタート アルゴリズムです。従来のスロー スタート アルゴリズムではパケット損失が発生する可能性がありますが、HyStart はネットワーク負荷の変化を予測することでウィンドウの過度の増加を回避し、TCP 接続のスループットと安定性を最適化します。
※アルゴリズムとは、簡単に言うと「問題を解決するための手順」のことです。
Proportional Rate Reduction比例レート削減 (PRR):
比例レート削減 (PRR)は、ネットワーク輻輳が発生したときに送信レートを制御するために使用される TCP プロトコルのアルゴリズムです。スムーズなレート調整により、ネットワークの輻輳による高速再送信を回避し、輻輳によるパフォーマンスの変動を軽減します。 PRR アルゴリズムは、データ パケットが失われた場合にレート調整プロセスを遅くし、より安定したネットワーク伝送を実現します。
※送信レートとは、簡単に言うと「1秒間にどれくらいのデータを送れるか」を表すものです。
ペーシング プロファイルペーシング プロファイル:
ペーシング プロファイルは、TCP フロー制御に使用されるメカニズムです。パケットの送信レートを制御して、ネットワーク内の過度のトラフィック集中や輻輳を防ぎます。通常、ネットワークの実際の状況に応じてデータ パケットを送信する間隔を調整し、データ フローの円滑性を確保して、ネットワーク全体の使用率とパフォーマンスを向上させます。

グローバル TCP パラメーターの設定方法

グローバル TCP パラメーターの設定を変更するには、次のコマンドを入力して Enter を押します。

netsh int tcp set global タグ=値

例えば、Receive-Side Scaling 状態を有効にする場合は

netsh int tcp set global rss=enabled

となります。

グローバル TCP パラメーターのおすすめ設定

  • enabled = 有効
  • disabled/off = 無効
  • default = 既定
名前タグおすすめの設定(値)備考
Receive-Side Scaling 状態rssenabledマルチコア プロセッサをご使用の場合は、有効にすることを推奨します。
現在一般家庭で使用しているほとんどのパソコンでは、マルチコア プロセッサ(CPU)が使用されています。例えば、パソコンを購入する際に「CPUコア 8コア/16スレッド」のように表示されていますね。この「8コア」をマルチコア(1つ以上のコア)と呼びます。
受信ウィンドウ自動チューニング レベルautotuninglevelnormal受信ウィンドウ自動チューニング レベルには、5つのレベルが存在しますが、デフォルトの Normal を推奨します。
アドオン輻輳制御プロバイダーdefaultこの設定は補足テンプレートに基づく TCP パラメーターで変更します。※変更後も表示は変わりません。
ECN 機能ecncapabilityenabledECN 機能を有効にすると、ネットワークの遅延が改軽減されるため、有効にすることを推奨します。
RFC 1323 タイムスタンプtimestampsenabledネットワークの状態が変化した場合のパフォーマンスを最適化できますので、有効にすることを推奨します。
初期 RTOinitialrto2000Window 11 バージョン 24H2 では 1秒(1000)に設定されていますが、TCP 再送信メカニズムの初期待機時間が短すぎるとネットワークの負荷が増加してパフォーマンスが落ちる場合があります。逆に長すぎると、データ損失が発生した場合に再送信が遅れ、通信の遅延が大きくなります。個人的には 2秒(2000)に設定することを推奨します。
Receive Segment Coalescing 状態rscenabledネットワークの受信効率が向上しますので、有効にすることを推奨します。
非 Sack の Rtt 回復性nonsackrttresiliencyenabledネットワークの状況に応じて TCP のパフォーマンスを最適化するために重要な要素です。有効にすることを推奨します。
SYN の最大再送信数maxsynretransmissions3SYNの最大再送信数が少なすぎると、Wi-Fi のようにネットワークの不安定な状況で接続が確立できなくなる可能性があります。逆に多すぎると、接続確立に時間がかかり、不要なトラフィックが増加する可能性があります。個人的には「3」に設定することを推奨します。(Wi-Fi の場合は「5」)
Fast Openfastopenenabledネットワークでの接続確立の遅延を削減するために必須な機能です。有効にすることを推奨します。
Fast Open フォールバックfastopenfallbackenabledTCP 高速オープン (TFO) をサポートしていない環境でも接続が正常に確立されることが保証されます。有効にすることを推奨します。
HyStarthystartenabledネットワーク負荷を回避し、ネットワーク接続の安定性を最適化しますので、有効にすることを推奨します。
Proportional Rate Reductionprrenabled安定したネットワークを実現します。有効にすることを推奨します。
ペーシング プロファイルpacingprofileoff通常は無効のままで問題ありません。
大容量のデータを頻繁に送受信する場合、リアルタイム通信やビデオストリーミングなどのアプリケーションを使用している場合は、有効にするとパフォーマンスが上がる場合があります。
おすすめ設定のコマンド
netsh int tcp set global rss=enabled
netsh int tcp set global autotuninglevel=normal
netsh int tcp set global ecncapability=enabled
netsh int tcp set global timestamps=enabled
netsh int tcp set global nonsackrttresiliency=enabled
netsh int tcp set global maxsynretransmissions=3
netsh int tcp set global initialrto=2000
netsh int tcp set global rsc=enabled
netsh int tcp set global fastopen=default
netsh int tcp set global fastopenfallback=default
netsh int tcp set global hystart=enabled
netsh int tcp set global prr=enabled
netsh int tcp set global pacingprofile=off
デフォルトの設定に戻すコマンド
netsh int tcp set heuristics disabled
netsh int tcp set global rss=default
netsh int tcp set global autotuninglevel=normal
netsh int tcp set global ecncapability=default
netsh int tcp set global timestamps=enabled
netsh int tcp set global nonsackrttresiliency=default
netsh int tcp set global maxsynretransmissions=4
netsh int tcp set global initialrto=1000
netsh int tcp set global rsc=enabled
netsh int tcp set global hystart=default
netsh int tcp set global prr=default
netsh int tcp set global pacingprofile=default
ペーシング プロファイルについて
説明
off または defaultページングしません。
initialwindow初期輻輳ウィンドウをペーシングします。
slowstart低速開始の間だけペーシングします。
always常にペーシングします。

一般的な家庭用ネットワークや小規模なオフィスネットワークでは特に有効にする必要はありません。

※遅延やパケットロスがほとんど発生しない環境では、有効にするメリットは少ないです。

受信ウィンドウ自動チューニング レベルについて
受信ウィンドウ自動チューニング レベル説明
Normal (デフォルト)ほぼすべてのシナリオに対応できるように、TCP 受信ウィンドウを拡大するように設定します。
DisabledTCP 受信ウィンドウをデフォルト値に設定します。
RestrictedTCP 受信ウィンドウをデフォルト値を超えて拡大するように設定しますが、一部のシナリオではそのような拡大を制限します。
Highly RestrictedTCP 受信ウィンドウをデフォルト値よりも大きく設定しますが、非常に慎重に設定してください。
Experimental極端なシナリオに対応するために、TCP 受信ウィンドウを拡大するように設定します。

受信ウィンドウ自動チューニング レベルについては何度も検証しましたが、デフォルト以外に設定すると通信速度が低下します。

そのため、デフォルトの Normal を推奨します。Normal の場合、必要な場合に受信ウィンドウは自動的に拡大されるようになり、あらゆる通信環境で最適な通信速度を保ちます。

補足テンプレートに基づく TCP パラメーターの設定

ここでは現在使用している輻輳制御プロバイダーを変更します。

Window 11 のデフォルトの設定では、輻輳制御プロバイダーは「CUBIC」に設定されており、

プロバイダー名(アルゴリズム名)説明
CTCPCTCPは、Microsoftが開発したTCP輻輳制御アルゴリズムです。特に、高帯域幅で遅延が大きいネットワーク(長距離ネットワークなど)において、高いスループットを実現するように設計されています。CTCP は、高帯域幅ネットワークでの利用を最大化するように設計されており、よりアグレッシブなアルゴリズムです。
DCTCPDCTCPは、主にデータセンター内のネットワークで利用されることを想定しています。
NewRenoパケット損失を検知すると、送信速度を段階的に減少させ、輻輳を回避します。
BBRGoogleが開発したアルゴリズムです。BBR (ボトルネック帯域幅と RTT) は効率的な輻輳制御アルゴリズムであり、特に高帯域幅、低遅延のネットワークに適しており、遅延を削減します。
CUBIC大規模ネットワーク、特に高帯域幅と高レイテンシのネットワークの場合にパフォーマンスを発揮します。CUBIC は、様々なネットワーク環境で安定した性能を発揮するように設計されており、より穏やかなアルゴリズムです。
高レイテンシとは、インターネットの回線が混んでいたり、遠くのサーバーと通信した際に、データが届くまでの時間が長くなることをいいます。

筆者のおすすめする輻輳制御プロバイダーは「CTCP」です。「CTCP」に変更することで、「CUBIC」のときよりも高いスループットが期待できます。

高いスループットのメリット:

  • 動画をスムーズに見たり、大きなファイルを早くダウンロードしたりできる。
  • たくさんの人が同時にインターネットを使っても、快適に使える。

輻輳制御プロバイダーを「BBR」に設定するとダウンロード速度およびアップロード速度が向上する場合がありますが、一部の環境で不具合が発生する場合があります。

例えば、プロキシサーバー経由でインターネット接続ができなくなったり、Hyper-V を使用している環境では仮想マシンが起動できなくなります。

現在の輻輳制御プロバイダーを確認する

現在のWindows PowerShellを確認するには、次のコマンドを入力して Enter を押します。

Get-NetTCPSetting | Select SettingName, CongestionProvider

すると、輻輳制御プロバイダーの一覧が表示されますので、「Internet」の右側を確認してください。

Windows PowerShell
Windows PowerShell

輻輳制御プロバイダーを変更する

輻輳制御プロバイダーを変更するには、次のコマンドを入力して Enter を押します。

netsh int tcp set supplemental Template=Internet CongestionProvider=プロバイダー名

例えば、「CTCP」に変更したい場合は

netsh int tcp set supplemental Template=Internet CongestionProvider=ctcp

となります。

変更後、もう一度現在の輻輳制御プロバイダーを確認してみてください。

Windows PowerShell
Windows PowerShell

デフォルトに戻したい場合は、次のコマンドを入力して Enter を押します。

netsh int tcp set supplemental Template=Internet CongestionProvider=

これで Windows 11 のネットワーク最適化は完了しました。変更前と変更後の違いを確認してみてください。

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