Windows 11 Home エディションで Hyper-V を有効化して活用しているユーザーの皆さん、2025年10月の累積更新プログラム「KB5066835」を適用した後、突然 Hyper-V の仮想マシンが起動しなくなった、という問題に直面していませんか?
先日、X(旧Twitter)で注意喚起いたしましたが、この問題の検証が完了し、安全な解決策が確立できましたので、本記事で詳しく解説します。
不具合の概要
この問題は、以下の特定の条件が重なった場合に発生します。
- OS: Windows 11 Home エディション (バージョン 24H2 / 25H2)
- 機能: バッチファイルなどを用いて Hyper-V が有効化されている
- 更新プログラム: KB5066835 が適用済み
- 症状: Hyper-V マネージャーから仮想マシンを起動しようとすると、以下のようなエラーメッセージが表示され、起動に失敗する。「’仮想マシン名’ は起動できませんでした。」 「’仮想マシン名’ は初期化できませんでした。」タイムアウト期間が経過したため、この操作は失敗しました。 (0x800705B4)。
このエラーコード「0x800705B4」は、一般的にタイムアウトを示すもので、Hyper-V の起動に必要なサービスやコンポーネントが、更新プログラムの影響で正常に応答しなくなったことを示唆しています。
【超重要】古い有効化バッチファイルの再実行は絶対に避けてください!
この問題に直面した際、多くの方が「もう一度 Hyper-V の有効化バッチファイルを実行すれば直るのでは?」と考えるかもしれません。しかし、インターネット上で広く紹介されている古いタイプの有効化バッチファイルを再実行するのは非常に危険です。
一つの問題を解決しようとして、より厄介な状況に陥ることを避けるため、安易なバッチファイルの再実行は絶対にしないでください。
なぜ古いバッチファイルは危険なのか?その技術的な理由
根本的な原因は、古いバッチファイルに含まれる dir /b %SystemRoot%\servicing\Packages\*Hyper-V*.mum というコマンドにあります。
Windows は、%SystemRoot%\servicing\Packages というフォルダに、更新プログラムのインストールパッケージを保管しています。重要なのは、このフォルダには最新バージョンのパッケージだけでなく、過去に適用された古いバージョンのパッケージも残っているという点です。
古いバッチファイルは、このフォルダ内にある Hyper-V 関連のパッケージを、新旧問わず全てリストアップしてしまいます。そして、その後のコマンドで、リストアップされた全てのバージョンのパッケージをシステムに強制的に追加してしまうのです。
その結果、システム内には最新のパッケージと古いパッケージが混在するという、矛盾した状態が生まれます。
この矛盾を検知した Windows Update は、「古いパッケージがあるから更新が必要だ」と判断し、最新の更新プログラムをダウンロード&インストールしようとします。しかし、バッチファイルによって古いパッケージがシステムに無理やり登録されているため、更新が完了したと正しく認識できません。そして、Windows Update を行うたびに「まだ古いパッケージが残っている!」と判断し、同じ更新作業を無限に繰り返してしまうと考えられます。
これが、Windows Update がループする不具合の正体です。 この深刻な副作用を避けるためにも、古いバッチファイルの実行は絶対にしないでください。
解決策:問題が発生しない最新のバッチファイル
今回の「KB5066835」を含め、今後の更新プログラムによる仕様変更に対応し、かつ Windows Update のループ不具合も発生しない、最新のバッチファイルを作成しました。
【このバッチファイルが安全な理由】
古いバッチファイルの問題点は、Packagesフォルダ内にある新旧すべての Hyper-V 関連パッケージを対象にしてしまうことでした。
この問題を解決するため、新しいバッチファイルでは、よりスマートな方法を採用しています。
- まず、PowerShell のコマンドを使い、現在の Windows の正確な「リビジョン番号」(細かいバージョン情報)をシステムから取得します。
- 次に、その取得したリビジョン番号を利用し、
dir /b %SystemRoot%\servicing\Packages\*Hyper-V*%REVISION%.mumというコマンドで、数あるパッケージの中からファイル名にそのリビジョン番号を含む、最新かつ正しい Hyper-V 関連パッケージのみをピンポイントで探し出します。
これにより、古いバージョンのパッケージが誤ってシステムにインストールされることがなくなり、Windows Update がループする不具合を根本的に回避できるのです。
すでに不具合が発生している方も、これから Hyper-V を有効化したい方も、こちらのバッチファイルをご利用ください。
【実行手順】
- 以下のコードを全てコピーします。
- メモ帳などのテキストエディタを開き、コピーしたコードを貼り付けます。
- 「ファイル」→「名前を付けて保存」を選択します。
- 「ファイルの種類」を「すべてのファイル (*.*)」に変更し、「ファイル名」を「Hyper-V_Enable_Fix.bat」のように、末尾が「
.bat」となる名前で保存します。 - 保存したバッチファイルを右クリックし、「管理者として実行」をクリックします。
- 「ユーザーアカウント制御」が表示されたら「はい」をクリックします。
- 黒いコマンドプロンプトの画面が表示され、処理が自動的に進みます。「操作は正常に完了しました。」といったメッセージが表示されたら、何かキーを押してウィンドウを閉じます。
- PC を再起動してください。
▼最新のHyper-V有効化バッチファイル
@echo off
pushd "%~dp0"
set "REVISION="
for /f %%i in ('powershell -Command "(Get-ItemProperty 'HKLM:\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion').UBR"') do (
set "REVISION=%%i"
)
if defined REVISION (
echo Success: Revision number [%REVISION%].
dir /b %SystemRoot%\servicing\Packages\*Hyper-V*%REVISION%.mum >hyper-v.txt
for /f %%i in ('findstr /i . hyper-v.txt 2^>nul') do dism /online /norestart /add-package:"%SystemRoot%\servicing\Packages\%%i"
del hyper-v.txt
Dism /online /enable-feature /featurename:Microsoft-Hyper-V-All /LimitAccess /ALL
) else (
echo Error: Failed to get revision number.
)
pause
実行後の確認
PC の再起動後、Hyper-V マネージャーを起動し、これまで起動できなかった仮想マシンを再度起動してみてください。エラー「0x800705B4」が表示されることなく、正常に起動すれば成功です。
まとめ
今回は、Windows 11 Home 環境で更新プログラム「KB5066835」を適用した後に発生する、Hyper-V の起動エラー 「0x800705B4」の原因と、安全な解決策について解説しました。
重要なポイントは、安易に古い有効化バッチファイルを再実行しないことです。本記事で紹介した最新のバッチファイルをご利用いただくことで、安全に問題を解決できるはずです。
もしこの手順で解決できた、あるいは何か不明な点がある、といった場合は、ぜひコメントでお知らせください。



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